映画『プライベート・ライアン』スティーヴン・スピルバーグ 1998年9月26日公開

冒頭のノルマンディー上陸作戦にて繰り広げられる殺戮の地獄絵図が衝撃だった。戦車が近づいている来る時の地鳴り、耳をかすめる銃弾の音、気付けば火薬と土埃と血の臭いが漂ってくる。常に「次の瞬間に死んでいるのは自分かも知れない」という絶望感を覚えた。
戦争とは人間の常軌を逸した愚かな営みなのだとしみじみ感じ入る。
本作のストーリーは、1人を残して全員の子どもを失った母親のために、残った1人を前線から救出に行くというもの。登場人物も自ら語るが、いわば政府の「広報活動」としてのミッション。
登場人物自身も1人のために何人もの命を犠牲にするミッションに大義があるのか疑問を抱きながら前に進む。どんな最期が待ち受けているのか、目を見張らずにはいられない。最前線では八方ふさがりの絶対絶命の状況下。何が待ち受けているのか・・・。

と、ここまではいいものの、最後の最後でチープなアメリカ映画に成り下がってしまった。
兵士は誰のために何のために戦っていたのだろう。果たして真意だったのか。主人公は意味があったと自分に言い聞かせているが、自分の犯した過ちを正当化するために作り上げた幻想ではないかだろうか。ここを掘り下げて欲しかったのだが、いつの間にかアメリカ万歳の映画になってしまった。え、それでいいの?とツッコミたくなってしまう。

映像美も迫力もあるし没入させるストーリーだし名作であることは間違いないが、「アルマゲドン」等のお涙頂戴の映画と変わらない。