書籍『生命とは何か-物理的にみた生細胞-』エルヴィン・シュレーディンガー 1944年

シュレーディンガー著『生命とは何か-物理的にみた生細胞-』岡小天・鎮目 恭夫訳読了。

 

理論物理学者であるエルヴィン・シュレーディンガーが物理学的見地から生命を分析した歴史的価値ある著作。1944年刊行。

 

物理法則が原子に関する統計的なものであり膨大な原始が存在する場合には近似的に成立するという前提のもと、遺伝子が比較的少数子の原子から成るにもかかわらず、熱力学的ゆらぎに抗い、規則的かつ永続性を持つ仕組みの謎に言及する。この問題についてシュレーディンガーは、遺伝子が非周期性結晶を持つ安定構造であると予言した。
ジェームズ・ワトソンとフランシス・クリック塩基配列の二重螺旋構造に関する論文が発表した1953年の約10年前に塩基配列(非周期性)の二重螺旋構造(結晶)の存在に言及しているのであるから驚きである。


また、エントロピー増大の法則に反して生物が平衡状態に至ることを免れているのは環境から負エントロピー(原著はnegative entropy)を摂取し、環境に呼吸や発熱等を通じてエントロピーを排出しているからであると論じる。負エントロピー単体の存在は否定されているが、重要な示唆を含むものである。